映画「家族を想うとき」あらすじ(ネタバレあり)と、作品紹介や感想などをご紹介します。
カンヌにおいて、パルムドール賞を受賞した、ケン・ローチ監督作品「わたしは、ダニエル・ブレイク」に続く、いわば続編作品です。
前作に続き、イギリスの抱える闇とも言える、隠れた貧困問題に焦点を当てた作品です。
日本でも問題になっている「ワーキングプア」は、イギリスでも大きな社会問題になっています。
今回の「家族を想うとき」は、働けば働くほど、貧しくなっていく家族に焦点を当てています。
フィクション映画ですが、ケン・ローチ監督の徹底した、貧困調査やインタビューを通して、現状の問題を浮き彫りにしていきます。
誰しもが明日の自分のことのように感じられる、ドキュメンタリーのような作品です。

映画「家族を想うとき」作品紹介
「家族を想うとき」作品基本情報
【日本公開】2019年12月13日
【原題】Sorry We Missed You
【監督】ケン・ローチ
【脚本】ポール・ラヴァ―ティ
【ジャンル】イギリス/フランス/ベルギー
【上映時間】100分
「家族を想うとき」キャストと登場人物
クリス・ヒッチェン:リッキー役
デビー・ハニーウッド:アビー役
リス・ストーン:セブ役
ケイティ・プロクター:ライザ・ジェーン役
ロス・ブリュースター:マロニー役
リッキー役には、配管工として20年以上働いた経験を持つ、クリス・ヒチェン。
アビー役には映画は本作が初出演となるデビー・ハニーウッドなど、オーディションを勝ち抜いた、新鋭キャストが揃っています。
「家族を想うとき」作品概要
2016年カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝き、日本でも大ヒットを記録した、ケン・ローチ監督代表作品『わたしは、ダニエル・ブレイク』。
この『わたしは、ダニエル・ブレイク』のリサーチを繰り返す中で、社会の底辺で目の当たりにした<現実>が、彼の心の中に生き続け、いつしか<別テーマ>として立ち上がり、どうしても撮らなければならないという使命へと駆りたて、今回の『家族を想うとき』は誕生しています。
グローバル経済が加速する<今>、世界のあちこちで起きている<働き方問題>と、急激な時代の変化に翻弄される<現代家族の姿>です。
そんな監督ケン・ローチ氏の感動作がようやく日本にもやってきます。
スタッフには『わたしは、ダニエル・ブレイク』に引き続き、ケン・ローチ監督が厚い信頼を寄せる精鋭スタッフが集結しています。
脚本は『スイート・シクスティーン』などを手掛けた、ポール・ラヴァティ。
音楽は『深い夜明け』などで、アカデミー賞に5度ノミネートされたロビー・ライアン。
個人企業主とは名ばかりで、理不尽なシステムによる、過酷な労働条件に振り回されながら家族のために働き続ける父。
そんな父を少しでも支えようと互いを思いやり、懸命に生き抜く母と子どもたち。
日本でも日々取り上げられている労働問題と重なり、観る者は現代社会が失いつつある家族の美しくも力強い絆に、激しく胸を揺さぶられる作品です。
「家族を想うとき」あらすじ(ネタバレあり)
舞台はイギリスのニューカッスル。
マイホームを買ってそこで家族と暮らすことを夢見て、ターナー家の父リッキーは、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立します。
配達用の車は自分で買うか、借りる必要があり、報酬は配達した荷物の個数によるという、非人間的な激務です。
イギリスで問題になっている「ゼロアワー労働」問題です。
「頑張れば頑張るほど稼ぎが増える」という宅配請負会社の言葉を魅力に感じ、仕事を始めましたが、すぐに、「休みなく働き続けなければならない」という、正反対のシステムであったことを知ります。
宅配会社の冷徹なスーパーバイザー、ロス・ブリュースターにリッキーは次第に追い詰められていきます。
妻のアビーはパートタイムの介護士として、時間外まで1日中働いています。
配達用のバンを手に入れるために、それまで妻のアビーが、看護師の訪問介護の仕事で必要だった、車までを売ってしまい、バスを利用しなくてはならなくなり、妻の仕事もより困難を極めていきます。
リッキーとアビーは、長時間労働、低賃金という条件の中、一生懸命に働きますが、働けば働くほど、借金が増えていくという、皮肉な結果になっていきます。
家族を幸せにするはずの仕事が、家族の間を引き裂き、高校生の長男セブと小学生の娘のライザ・ジェーンは、寂しい想いを募らせていきます。
こうして家族はすれ違い、バラバラになっていくのでした。
そんなバラバラになっていく家族を、なんとか繋ぎとめようと必死な、小学生の娘のライザ・ジェーン。
そんな中、長男のリッキーは、学校にも行かなくなり、自分のコートを売って、スプレーを買い、街に落書きをして、警察に捕まってしまう事件が起こってしまうのでした。。。
この映画は、イギリス社会が抱える貧困の実態を、2008年のサブプライムローン問題から発生した世界的な不況を背景に、ノーザンロック銀行の破綻や、金融危機、職場や学校でのいじめ問題、労働者の搾取や不平等など、現代の貧困問題の根っこになる部分に焦点を当てています。
あまりにリアルな描写は、観ている間に、フィクションであることを忘れてしまうようです。
時代に翻弄され、次第に追い込まれていく、ターナー家はどうなってしまうのでしょうか?
「家族を想うとき」感想
この映画の一つのテーマが、独立した個人事業主とは名ばかりの、いわば現代の奴隷制度に対する問題定義です。
労働者にすべての責任を負わせ、支払いの保証はなく(配送した分だけ、報酬が発生する)、あくまでも雇用されているわけではなく、「パートナー」なので、必要とあれば1日の通知で会社から解雇される。
そんな中で、搾取するものと搾取されるものが生まれ、社会に深刻な、貧困問題を発生させている。
そんな現代のイギリスの問題に焦点を当てました。
日本でも同様に問題視されている労働問題と重なる社会背景のもと、失われつつある家族の絆に、心を揺り動かされる作品です。
現在の労働問題を浮き彫りにした作品であり、現実に現代社会で起こっている社会問題を、映像を通して伝えている作品であると言えます。
本作を通して、社会が目を背ける、隠れた貧困問題をそれぞれが考えるきっかけにしたいですね。
この映画の製作のきっかけともなった、ケン・ローチ監督作品『わたしは、ダニエル・ブレイク』を観ておくと、監督のメッセージがより伝わってきます。
「男はつらいよ」の山田洋次監督も、弱い立場の人間に焦点を当てた、ケン・ローチ監督作品の大ファンであることを公言しています。
なぜケン・ローチ監督が、80歳を超えた今、リタイア宣言を撤回してまで、この映画を作ったのか?
イギリスのメディアも、社会も目を向けない自国の貧困問題に気づいて欲しい監督の危機感が感じられる映画です。
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*本ページの情報は2019年10月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXTサイトにてご確認ください。